
であったということは間違いのないところであります。 このグレゴリオ聖歌というのは、今でもカトリック教会に行くとやっているところはたくさんあるんですが、このごろスペインあたりの小さな教会でやっているもののCDをつくったところが、これがもう爆発的に売れちゃって、つまりキリスト教なんかと全く離れて、お祈りなんていうのと全く離れて、現代人が音楽として聞いて非常に心が休まるということで、60万とか何万とか言っていましたけれども、売れているということで、このごろはやっていますので、もしお聞きになりたい方は、そこら辺のレコード屋さんに行ってグレゴリオ聖歌といえば売っているはずです。このグレゴリオ聖歌が西洋音楽の起こりであったわけです。 このグレゴリオ聖歌というのは、もちろんさっき言ったようにお経ですから、1人で同じ節をやるわけですね。大勢でやるときには同じ節をみんなで歌うわけ。ですから、これは同じ節をみんなで歌う、いわゆる斉唱というんですよね。単旋律と言いますけれども、1つの旋律の線があるだけだったのですが、大体10世紀から15世紀ぐらいの間になってきますと、それが2つの違う節を一緒に歌う、つまり二重唱のような形になってくる。それがまた三重唱になって、四重唱になってというぐあいにして、そうすると、そこで我々が知っている合唱という形が起きてくるわけですね。ですから、大体10世紀から15世紀ぐらいの間に、合唱音楽を中心として教会の中で音楽は猛烈に発展をするわけです。もちろん、合唱でみんなで歌ったり、あるいは1人が独唱をしたりなんていうことは、当然それから派生して出てくるわけですが、声楽が中心でした。 楽器では、パイプオルガンが教会の中に入った一番古い楽器で、これは10世紀よりも前の時代からもう教会の中にあったわけで、その後も少しずつ楽器がふえて、そういう楽器は、声楽のいわば伴奏という形で使われて、現代でいえばかなり高度な音楽、今ではそれは鑑賞用の音楽として聞くことがありますけれども、盛んに教会の中で行われるようになりました。 ただ、しかし、その音楽はかなり複雑で、立派な音楽に成長していたわけですけれども、現在我々が考えているような人間が聞いて楽しむというような目的をもって作られたものでは全くなかったわけです。これは、つまり神に対する祈りそのもの。そこの教会にいるみんなで歌って、みんなで歌う文句というのが典礼の文句、つまりお経の文句でありまして、ましてそれを人間が聞いて楽しむなんていうことは全くまだその時代にはなかった。大体16世紀ぐらいまで、そういう時代が続いたわけです。
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